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第2話 霊感者の言動
切ない心霊現象の実話。
30年くらい前のこと。
当時、私は茨城県内にあるスーパーに勤めていた。ある日、職場のAさんが病死した。突然死ではなく、亡くなる二か月くらい前から体調不良を訴えていて、当初は通院しながら仕事をしていたけど、やはり入院した方がいいということになって、しかし、ついに帰らぬ人となってしまった。
告別式を終えた翌日のこと。
場所はスーパーの店内。従業員たちは開店準備の品出しなどに追われている。女性従業員パートの中にとびきり霊感の強い人がいて、その人が作業の手を止めて、私に話しかけてきた。
「ねえ、阿賀野さん、見えますか。亡くなったAさんがこっちを見て笑ってますよ。手を振ってる」
「え?」
私は驚いてその方角を眺めた。そこはAさんが担当していた精肉売り場前のコンコースだった。しかし、霊感のない私は、Aさんの姿を見ることはできなかった。
「こっちへ来ますよ。最後のあいさつかしら」
「え、見えないよ」
「あら、残念ねえ」
そう言われても、見えないものは見えないのです。
「ゴメン、見えないよ。Aさん」
私は空気に話しかけて、笑ってごまかした。
通じたかな…
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