第4話 蛙の祟り

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第4話 蛙の祟り

 霊感者の金井兼子さんは、しばしば奇妙なエピソードをよく披露してくれた。創作なのか実話なのかは、今でもわからない。その中でも特に印象に残っている話をいくつか紹介してみましょう。  神奈川県内の某所。そこには蛙男(かえるおとこ)がいるという。  あ、読者のあなた、いま笑ったでしょ? え、笑ってない?   彼の名は…奥村太郎とでもしておく。  奥村太郎は小学生の頃から弱い者いじめが好きだった。昨今のイジメは陰湿で卑劣なイメージが強いが、昔のイジメはSNSやネットがないのでやり方がストレートで残忍だった。  奥村は、獲物を見つけると川に突き落としたり、恐喝したり、万引きをやらせたり、万引きを拒否すると鬼よりも凄い形相で睨み、殴った。教師に見つかると、反省したふりをしてしばらく大人しくなるが、時間がたつと元に戻る。  中学生になると、身体が大人なみにデカくなって、やることも残忍さを増して、えぐいことを平気でやった。酸鼻を極める凄惨なリンチを男女の区別なく行った。奥村の取り巻きは当初は彼を崇めていたが、そのうちに畏れをなして誰も彼の蛮行を止めることができなくなった。  ある日の夕方のことである。  奥村はパチンコで大負けした。奥村は中学生だが図体の大きさと大人びた顔立ちのせいで、誰も彼を未成年だと疑う者はいなかったのだ。当時は、たばこだってうるさくない時代である。十四歳にしてピースを吸っていた。  彼は帰り道の途中で小学三年生くらいの男の子と遭遇する。男の子は金魚鉢を大事そうに抱えており、歩きながら中の様子をしきりに窺っていた。  俄然、奥村は少年が抱えている金魚鉢が気になった。パチンコに負けた腹いせに悪戯をしてやろうと思った。あたりを見回すと、あたりに人の姿はない。 「おい。おまえ!」  奥村は少年の前に通せんぼをして立ち塞がった。手には小型のナイフを握っている。      
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