第4話 蛙の祟り

3/5
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
 少年は顔を歪めて泣いた。カエルをかえして、いじめないでと、わんわんと泣いた。  奥村は取り合わなかった。奥村の心の中では、恐ろしく残酷な感情がたぎっていたのだ。彼はウエストポーチの中をゴソゴソと探ると、大きなハサミを取り出して、これ見よがしに鳴らした。  しゃきしゃき、しゃきしゃき…  しゃきしゃき、しゃきしゃき…  そして無造作に、カエルの手足を切断したのだ。カエルはそのまま道路に叩きつけられた。両手足をもがれたカエルは、もぞもぞと悲し気に地面を這った。奥村は哄笑した。 「わああ、ひどいよ! ひどいよ!」  少年は泣きながら奥村に飛び掛かった。しかし、大人ほどの背丈のある中学生に叶うはずもなく、逆にお腹に蹴りを食らって吹っ飛んでしまった。勢いのあまり、少年は道路に尻もちをついた。  奥村はカミサマカエルの持ち主に向かって凄んだ。 「俺様の逆らうとは、いい度胸してやがる! てめえの指を切り落としてやろうか」ハサミをふりかざすと、少年は泣きながら逃げていった。「ふん、つまらねえガキだな」奥村はまた嗤った。そして、死ぬ寸前のカエルに向かって、立小便を浴びせたのである。  哀れなカエルはひくひく痙攣し、そのまま静かに動かなくなった。カエルの最期の目が、奥村を凝視していた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!