幼なじみ

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「ん? 狩野先生から貰ったんだよ」 「おれら、今日休みだったからさ、お前を見舞いに病院に行ってきたんだよ。結局、入れ違いになったけど」 「ああ、わざわざ悪かったな。意外と早く動けるようになったから、今朝出たんだ。すまない、連絡し忘れていた」 「いいよ、いいよ。気にしないで。あそこも、あまり長く居られないからね」  病院には負傷者が引っ切りなしにやってくる。動ける奴はさっさと退院する。それが鉄則だった。俺も結構な怪我だったから、体調を見ながら三、四日程度は病院で休むつもりだった。が、たった二日程度で調子が良くなったので、早々に退院したのだった。 「で、帰ろうとしてたら、ちょうど先生と会って、持って行けって。お偉いさんに貰ったらしいんだけど、ほら狩野先生って下戸だろ。だから、おれらにって」 「今、お酒みたいな嗜好品は貴重でしょ。だから、棚に飾っておくよりも飲める奴が飲んだ方が酒も喜ぶだろう、ってね」 「そうか。だったら、よく味わって飲まないとな」  そう言い、俺はコップの中身を一口飲み、酒の味と香りをじっくりと味わった。 「しかし、陽介。あれだけ撃たれて、よく無事だったな」  酒の入ったグラスを片手に、ガジガジとスルメをかじっていた洸希が、俺の布団にずっしりと身体を預けながら話しかけてくる。客なのだが、まるで家主のような態度だ。 「そうだな。今回はヤバかった。痛みとか尋常じゃなかった。……けど、頭狙われるまでは死ぬって感じはしなかったな。なんか、出血量もそんなになかったし」
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