幼なじみ

8/10
前へ
/70ページ
次へ
 眼鏡でインテリっぽい見た目の隆之介はもっともらしいことを言うが、実際のところは外見と違い脳筋。頭で考えるよりも行動に移すタイプだ。そんな男が言うのだからさらっと聞き流す所だが、隆之介が見せてきた手の平にはたしかに新しい傷痕が残っていた。 「……やっぱ、アイツらの技術なんだよな。変な後遺症とか出ないといいけど……」  雅史が子供みたいに両手でコップを包み、不安をぼやく。その空気に感染するように、他の奴らも表情を曇らせる。口にこそ出さないが、治療薬の世話になっている人間は感謝をしつつも少なからずこういった不安を抱えている。すると、洸希が「あはは」と笑いながら身体を起こし、雅史の背中を叩いた。 「なーに言ってんだっ。アイツらの技術とか関係ねーよ。俺たちが生きていられるのも治療薬のおかげなんだからな。治療薬がなければ、俺たち前線に出てる奴は怪我だらけで動けなくなってる。こうやって酒を飲めるのも治療薬のおかげって奴だ」  そう言いうと、洸希は笑いながら豪快にグラスの酒をあおり、「うめーっ」と歓喜の声をあげた。  洸希の言葉と態度で、再び空気が変わった。ガキの頃から、洸希は周囲の空気を良い方に変える力があった。だから、俺たちは洸希を慕い、憧れ、大人になった今でも小隊として一緒にいるんだ。  
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加