幼なじみ

10/10
前へ
/70ページ
次へ
「先生の言うことを疑っていた訳じゃないけど、そこでは怪我で動揺していたんだろうって、話してたんだ。……けど、一緒に飲んでて分かった。先生の言ってることが少し間違ってるけど、正しかったってことが」 「…………」 「陽介。お前、俺たちと話してるとき、何か別のこと考えていただろ。……俺たちとはぐれたとき、敵と何かあったのか?」 「……――――っ」  心臓が跳ね上がった。  ……やっぱり、こいつらには先生以上に隠し事なんてできない。  でも、気づかなかった。俺は自分でも分かるぐらいに浮かれていた。だから、この感情が表に出ていたなんて思いもしなかった……。いや、このメンバーだからこそ出てきたのかもしれない。俺たちが集まって酒を飲めば、話題は必然的にガキの頃の話になるのだから……。  俺の中にあるわだかまりの原因は分かっている。それは、ここに居る全員に関係あることだ。けれども、この感情の大半を占めているものは、俺個人の問題……。  俺は右手首のくすんだ青色のプラスチックビーズのブレスレットを見つめ、視線を落とした。 「…………アイツがいた」 「アイツ?」 「……ユウ」  その名を出した瞬間、室内の空気が一変し、緊張に包まれた。 「……ユウって、……あのユウか?」 「ああ、あのユウだ。ユージーン……、ユージーン・クライスト……」  ユージーン・クライスト。俺たちの、もう一人の幼なじみの名。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加