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「先生の言うことを疑っていた訳じゃないけど、そこでは怪我で動揺していたんだろうって、話してたんだ。……けど、一緒に飲んでて分かった。先生の言ってることが少し間違ってるけど、正しかったってことが」
「…………」
「陽介。お前、俺たちと話してるとき、何か別のこと考えていただろ。……俺たちとはぐれたとき、敵と何かあったのか?」
「……――――っ」
心臓が跳ね上がった。
……やっぱり、こいつらには先生以上に隠し事なんてできない。
でも、気づかなかった。俺は自分でも分かるぐらいに浮かれていた。だから、この感情が表に出ていたなんて思いもしなかった……。いや、このメンバーだからこそ出てきたのかもしれない。俺たちが集まって酒を飲めば、話題は必然的にガキの頃の話になるのだから……。
俺の中にあるわだかまりの原因は分かっている。それは、ここに居る全員に関係あることだ。けれども、この感情の大半を占めているものは、俺個人の問題……。
俺は右手首のくすんだ青色のプラスチックビーズのブレスレットを見つめ、視線を落とした。
「…………アイツがいた」
「アイツ?」
「……ユウ」
その名を出した瞬間、室内の空気が一変し、緊張に包まれた。
「……ユウって、……あのユウか?」
「ああ、あのユウだ。ユージーン……、ユージーン・クライスト……」
ユージーン・クライスト。俺たちの、もう一人の幼なじみの名。
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