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◇ ◇ ◇
今から十二年前の秋、俺たちが通っていた小学校に一人の転校生がきた。
過疎化が進み、一学年の児童数が十人にも満たない学年もあるような小さな学校。俺たちの学年も、男子が六人、女子が四人という少人数だった。そんな田舎に転校生が来るのだ。しかも同じ四年生だと聞き、俺たちはおおい盛り上がった。
その日を迎えた日、教室は朝からその話題で持ち切りだった。
「こんな田舎に転校生か。どんなヤツが来るんだろうな」
と、少し横暴なところはあるけど、皆を引き付ける力を持ったリーダーの洸希が話題を振る。
「男子かな、女子かな?」
家が定食屋を営んでいて、本人も料理好きな尊がワクワクしながら話題に乗る。
「やっぱ、女子がいいな~」
俺たちの中で一番体格が良く、運動神経も抜群な友春は若干鼻の下を伸ばしながら希望を言う。
「男子でもいいだろ。一緒に遊べる友達が増えるんだから」
洸希とは違った意味で行動力があり、何かとトラブルを引き寄せるが、なぜか許されてしまう隆之介が友春の希望に反発する。
「怖い子じゃないといいな」
おっとりと気弱だが、手先が器用で図工の時間に注目されることの多い雅史はそわそわとしている。
皆が転校生を予想するなか、メンバー中で何の特徴も特技もない俺だけは話題に乗らず、一人ニヤニヤとしていた。
この時、俺はすでに知っていたのだ。どんな子が来るのかを。しかも、もうその子と言葉も交わしていた。
家の隣には長く人が住んでいない空き家があった。そこに夏休みの初め頃から人が出入りするようになり、改築が行われはじめた。
そして、秋も深まった頃、一組の家族が引っ越してきた。その一家が家に挨拶にきた際、一緒に来ていた子が同級生だということで、少し話しをしたのだ。
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