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皆が盛り上がる中、その時のことを思い返していると始業のチャイムが鳴り、同時に担任が教室に入ってきた。
「みんな知っていると思うけど、今日からお友達が増えます。さあ、入って」
教室に入るなり、興奮する教室を鎮めるように担任は言い、転校生を迎え入れた。
開いていたドアの端に見え隠れしていた転校生が教室に入ってきた瞬間、俺を除く全員が息をのんだのが分かった。
黒髪に赤毛が斑に混じる不思議な毛色の髪に、日焼けなんて知らないような透き通った白い肌。整った顔に輝く薄いブルーの瞳。背丈は俺たちと変わらないけど、しなやかな歩みはどことなく気品があり、大人びて見えた。
田舎の垢抜けない俺たちとは違う、洗練された外国の男の子。
「ユージーン・クライストです。よろしくおねがいします」
担任の紹介の後、転校生ユージーンは流暢な日本語で挨拶をし、お辞儀をした。その仕種は丁寧だったけど、緊張感が見て取れた。けど、顔を上げて俺と目が合った瞬間、ユージーンは緊張の解けた笑顔で手を振ってきた。自分に向けてだと分かった俺は、同じように笑顔で手を振り返えした。その瞬間、教室にある視線が一斉に俺の方に向いた。地味な俺が初めて注目を浴びた瞬間だった。俺は、妙な優越感を感じながら、別の嬉しさも感じていた。
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