転校生

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 放課後、俺たちは早速ユージーンを誘って裏山にある秘密基地に向かった。  裏山にある大きなな木の側に建てられていた古い小屋。そこが俺たちの秘密基地だった。元々は洸希の祖父が伐採道具などを仕舞っていたのだが、別の場所に新しい小屋を建てたので使わなくなった。それを洸希が使いはじめ、俺たち全員の秘密基地になった。  俺たちがそこに集まってすることは、持ち寄った菓子を食べたり、携帯ゲームで遊んだりと家でもできそうなことが多かった。けど、親の目がない場所というのは妙な開放感があり、自分たち以外には秘密というシチュエーションもワクワクして、家で遊ぶよりもずっと楽しかった。  最初は小屋のボロさに驚いていたユージーンだったが、すぐにこの環境にも馴染み俺たちと秘密基地を楽しんでいた。 「なあ、ユージーン」  夕方になり、そろそろ帰ろうかとなったとき、ふいに洸希がユージーンを呼んだ。でも、なぜか洸希は用件を告げるでもなく、不服そうに押し黙っていた。何事かとユージーンは不安そうにし、皆は首を傾げる。 「……やっぱ、ユージーンって、呼びにくくないか?」  あっ……と、皆が顔を見合わせた。たしかに、外国名に不慣れだった俺たちは『ユージーン』という呼び方に言いにくさを感じていた。 「だったらジーンって呼んで。家族のみんなもそう呼んでるから」  ユージーンはそう提案するが、洸希は納得できていないようだ。 「ジーン……かぁ。なんか、それも違うんだよなぁ」  洸希は「違う」と言いながら首を捻る。 「あっ、なら『ユウ』はどう?」  名案とばかりに、隆之介が言う。すると、今度はユージーンの方が首を傾げてしまった。が、俺たちの方はしっくりときていた。
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