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ユウの説明では、両親が揃って同じ病気を患っているのだと言う。アレルギーみたいなもので、他人との接触が病気を悪化させるらしい。その病気の影響で目が光に弱くなり、仕方なく夜でもサングラスをしていると言っていた。田舎に越してきたのも、人や人工の明かりが多い都会を離れるためだったらしい。
もっともらしい説明で、当時は誰も疑問にも思わなかった。けど、世界が変わった今なら分かる。その説明に真実が全く含まれていなかったことに。
両親の病気の話を信じていた純粋な頃の俺は、一度ユウに尋ねたことがあった。
「ねえ、ユウ君。ユウ君は、おじさんたちの病気に自分もなったらどうするの? 怖くない?」
子供らしい無神経で残酷な質問だった。けど、ユウは笑顔だった。
「ボクもお父さんたちと同じになるよ。怖くないよ」
今考えれば、奴らの返答として当たり前の答え。でも、当時の俺は、こう答えたユウの姿が病気にも屈しない強い男に見え、憧れを抱いた。
俺がユウにした無神経な質問のことなどすっかり忘れた小五の夏休み。その日、洸希たちは家の手伝いなどで遊べず、遊んでいたのは俺とユウだけだった。
「ヨウくん。今日は何して遊ぶ?」
昼ごはんを食べてすぐ遊びにきたユウが、マンガを読みながら聞いてくる。俺はちょうど読んでいたマンガに釣りのシーンが描かれていたことに触発され、適当に釣りを提案してみる。すると、ユウの方もあっさり乗り気になった。
そうと決まれば行動は早い。釣りの道具を準備し、自転車に乗って少し遠くにある川に向かった。
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