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だけど、敵は違う。奴らは俺たちと同じような軍用装備と殺意を示す銃火器装備している。総重量はかなりの物になる。それなのに、敵はその重量を感じさせない。奴らは、瓦礫の地面を音だけでなく気配さえも殺して移動していく。
敵は俺が必死に逃げる背後から静かに迫り、その無様なさまを嘲笑するようにわざと照準をずらして撃ってくる。
弱った敵をわざと逃がし、ジワジワと追い詰めて狩る。これが奴らの殺(や)り方だ。
「――――ぐっ!」
突如、右足に激痛が走り、ガクリと膝が落ちた。敵の放った一発が右足に命中してしまったようだ。
どうにか立ち上がり敵との距離をとろうとするが、痛みが邪魔をしてまともに歩けない。そうしている間に、二初目の弾丸が左足を掠め、とうとう立ち上がることさえ難しくなってしまった。
銃撃が止み、背後から嘲笑の声が聞こえてくる。そして、敵の一人が俺の方に近づいてきた。
敵は俺から一メートルくらい離れた場所で歩みを止め、僅かに目を細めて俺の姿を見下ろしてくる。
歳は俺と同じ二十代前半辺り。ヘルメットの端から黒と赤が混じった不思議な色合いの髪が覗き、瞳は薄いブルー。日本人に比べ大柄な体格を含め、ぱっと見は白人男性を思わせる外見をしている。しかし、奴の瞳には人間とは異なる細く鋭い瞳孔ある。まるで猫のような瞳だ。宝石のような美しさに一瞬息をのむが、その本質は残虐性。奴の瞳は、獲物をいたぶる愉しみを得た獣の目をしている。
殺意を秘めた獣の目に睨まれ抱くのは、死への恐怖だろう。だが、俺は恐怖とは別の感情が湧き上がっていた。
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