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「…………ユウ……」
緊迫状態からの再会。ヒュッと喉が鳴り、そのまま呼吸が止まってしまいそうだった。
全身に嫌な汗が流れる……。
あまりに突然で、ナイフを持っていた手が震える。戦意も喪失してしまい、俺は無言のまま立ち尽くしていた。すると、ナイフをしまったユウがゆっくりと近づいてきた。
目の前で足を止めたユウは、静かに俺を見つめてきた。ガキの頃は同じくらいの背丈だったはずなのに、成長した今のユウの顔は見上げる位置にある。その顔も、中性的だった柔らかさは薄れ、すっかり大人の男の顔になっていた。
「……久し振りだね、ヨウくん」
殺意の消えた低い男の声。
その声はまだ聞き慣れないものだけど、声の雰囲気や、ふっと見せた柔かな表情は、俺の知るユウと同じだった。
――会いたくなかった、会いたくなかった。
頭の中では拒絶を連呼している。
――会いたかった、会いたかった。
心の中では歓喜の声をあげている。
鳴りを潜めていた感情が、俺をぐちゃぐちゃに掻き乱していく。
あの日、対峙したユウは、俺が誰か分かっても敵意を消さなかった。だから、俺もそれに抗う意思を保ち続けることができた。なのに、今のユウからは完全に敵意も殺意も消えている。
懐かしいユウ君の面影を見せる姿に、掻き乱された感情が思い出の中の感情に侵蝕されていく。
「ヨウくん。こんな所で一人、どうしたの? もしかして、仲間とはぐれた?」
「…………ああ」
敵に状況を伝えるなんて愚行の極み。無意識に答えるも、僅かな理性と羞恥がユウから視線を逸らさせる。
「そうなんだ。オレと同じだね」
ユウはフフッと自嘲する。
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