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ユウは簡単に自分たちの星のことや生態について語った。
ユウの星は『パステト』と言い、驚くことにエジプト神話の神の名と同じだった。
その神は猫の姿をしているが、ユウたち異星人も猫に酷似した性質を持っていた。代表的なものが瞳と身体能力といったところだ。
ユウが言うには、この性質は成長期と共に現れはじめるらしい。ガキの頃のユウが俺たちと同じだったのも、まだ成長期に入っていなかっただからだった。
「地球人はこの戦闘を『戦争』呼んでいるけど、実はオレたちにとっては違うんだ」
「どういうことだ?」
「これは『狩り』なんだよ」
「……は? 狩り……? なんだよ、それ」
「日本では駆除目的の狩猟が主だけど、他の国ではあるでしょ、娯楽でする狩り……スポーツハンティングが。それと同じ。オレたちパステトの人間は狩猟本能が強く、それを満たすために惑星を渡っているんだ」
多くの地球人が死に、傷つき苦しんだ戦争の原因が、どうしようもないほどに身勝手な理由で吐き気がした。また掴みかかりそうになったが堪え、ユウの話しを聞き続けた。
「オレたちの狩りには少しこだわりがある。一方的な虐殺は好まない。狩りを楽しむ一方で、狩られるスリルも楽しむ。だから、適度に文明が発達した惑星で、均衡した戦況を維持しようとする」
開戦当初から引っ掛かっていた部分が解けた。恒星間航行が可能な科学力を持っているのに、異星人たちの武器や装備は地球に現存する物ばかりだった。狩られるスリルのためにわざと武力を地球基準に合わせていたんだ。無駄にいたぶる殺(や)り方もだが、本当に遊びの感覚なんだ。
理解できると同時に、理不尽な言い分に言いようのない苛立ちが沸き起こる。
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