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「まあ、長いよね。でも、宇宙空間を高速で移動していると時間の流れって変わってくるんだよ。何だっけ、日本の昔話にあったよね。二、三日、海の底にあるお城に行って戻って来たら地上では何年も経っていたって話し。それと似たような現象が宇宙空間では起こるんだよ」
「浦島太郎か」
「そう、それ。だから、オレたちの感覚では数百年くらいの感覚だったりする。まあ、それでも長いよね。選出した人間は確実に死んでいるし、後世の人間も送られてくるデータで存在を知る程度になったりする」
それからもユウは淡々と語り続けた。
地球にいる猫科の小型生物、いわゆる猫に偵察機の役割を持たせる遺伝子を埋め込み、古代エジプトに放った。偵察機の遺伝子は定期的に発現し、体の擦り寄せなどのマーキング行動でデータを移せると言う。昔、ユウの目が一瞬だけ猫のようになったのも、データ送信による影響だったようだ。
他には、人類軍にとって救世主となった治療薬が、戦力維持のためにわざと流出されたものだということ。もともとパステト人は出生率が極端に低いのだが、狩りの時期に入ると飛躍的に上昇する。狩りの時期は、欲求を満たすと同時に、繁殖の時期でもある。と、様々な驚きをもたらす内容だった。
「でも、どうしてそんなことを俺に話すんだ」
話しの内容は興味深いものばかりだった。だが、その中には敵に知られれば不利になり得るものもあった。ここから帰還した後、俺が報告したらどうなるかユウが想像できないはずはない。
「もうすぐ、終わるからだよ」
「終わるっ⁉ 終わるのか、この戦争がっ‼ でも、なんで突然……」
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