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昔、親と派手に喧嘩をしたことがあった。「こんな家出ていってやるっ」と、啖呵を切った俺は、鞄に菓子や着替えを詰め、秘密基地に向かった。その際、俺はユウを道連れにしていた。
本当なら、頃合いを見てユウだけは帰すつもりだった。だけど、暗くなっても秘密基地にいるという非日常が俺たちを楽しくさせ、時間を忘れさせた。挙げ句、寝落ちしてしまったのだ。
俺たちが呑気に寝ていた時、町では夜になっても帰ってこない俺たちの捜索が始まっていた。町中の大人があちこち探し回り、洸希の祖父が秘密基地で寝ている俺たちを見つけた。こんな大事を起こした俺は、もちろん両親にこっぴどく叱られた。
「あの時は巻き込んで悪かったな」
「気にしないで。ヨウくんと一緒で楽しかったから」
ユウは楽しそうに微笑む。
「本当に楽しかった。ヨウくんと過ごした日々は……。夏のヒマワリも、秋のお祭りも。全部、全部、オレの大切な思い出……」
そう噛み締めるように言ったユウが、すっとこちらに身体を迫らせる。無意識に動いていたのか、人一人分は開いていた二人の距離が、いつの間にか拳一つ分程度にまで狭まっていた。
「オレの初恋は、ヨウくんなんだよ」
「――――!」
唐突な告白に、心臓が跳ね上がる。
「…………なんで……、なんで今、そんなこと言うんだ」
「今だから言ったんだよ。ここは今、閉ざされた世界。外での争いからも隔たれた世界。生まれとかの違いも関係ない。ここにいるのは、共通の思い出を持った二人の人間だけだから」
薄いブルーの瞳が、まっすぐ俺を見つめてくる。
「その気持ちは今も変わっていない……」
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