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「あ、そうだ。これも聞きたかったんだけど、ユウの『夢』って何だったんだ? たしか、一つは『父親みたいになる』だったよな。なら、もう一つは?」
「ヨウくんに『好き』って言いたかった。それがオレのもう一つの夢」
ユウは言い渋ることもなく答えた。そのまっすぐな声に、心打たれた。
「そっか。夢、叶ったな」
「うん」
ユウは、ガキの頃いつも見せていた満面の笑みで頷く。
「けど、願っていた以上の夢が叶うと、どうしても贅沢になってしまう」
ユウが笑顔を真剣なものに変え見つめてくる。地べたについていた俺の手にユウが手を重なる。その手からは、眼差しと同じ真剣な意思が感じられた。
「ねえ、ヨウくん……。オレと一緒に来ない?」
「……どういうことだ?」
戸惑いの混じった俺の言葉に、ユウの手が微かに震える。
「その言葉のままの意味。オレと一緒にパステトに来てほしい」
俺がユウと一緒にパステトに……。
「パステト人の中には、地球人を捕まえて囲っている人間がいるんだ。だから、ね」
「……は? 捕虜になれってことか?」
最初は、あまりに突然の申し出に虚をつかれ、理解が追いつかなかった。少し間をおき、俺とユウが共に暮らす未来を想像した。
だが、次の発言はなぜか許容できなかった。ユウにそういう意図がないことは頭で理解していても、無理だった。
俺は乱暴に立ち上がり、ユウに背を向けた。
「――違うよっ! 確かに、形だけ見ればそう見えるかもしれない。でも、オレはっ」
俺がここから去るとでも思ったのか、ユウは俺の肩を力いっぱい掴み、引き戻そうとしてくる。
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