別れ

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「俺に洸希たちを裏切れって言うのかよっ‼」  肩に置かれた手を振り払い、俺よりデカいユウの身体を力任せに壁に打ち付ける。ユウは痛そうに顔を歪めるが、すぐにふっと視線を落とした。 「そう……だよね……」  そう小さく言い俯いたユウは、静かに口をつぐんだ。  重い沈黙の空気。気まずいが、どう声をかけていいか分からない。どう答えたらいいのかも分からない。  俺が答えを出しあぐねいていると、おもむろにユウが顔をあげた。 「――だけど、オレだってヨウくんと別れたくないんだっ!」  薄いブルーの瞳から涙が一筋流れる。その泣き顔が、あの夜に見たユウの姿と重なる。  あの夜、ユウは何も何も言わず俺の手を振り払った。けど、今のユウからは、あの夜には言えなかった想いが発せられている。  心が揺らぐ。俺もユウと別れたくない。その気持ちは強くある。だけど、それと同じぐらい、仲間たちの存在も大きい。洸希たちは、足手まといでしかない俺を隊から外すことなく、ずっと仲間として認めてくれていた。ユウに対する想いを知りながらも俺を信じてくれていた。  今、ここでユウの手をとれば、俺はそんな洸希たちの思いを踏みにじる下衆になってしまう。  いや、俺は自分の意思でユウとセックスしてしまった。もうすでに洸希たちを裏切っているのかもしれない。 「でも、もうこの戦いは終わるんだ。自由になれるんだよ」 「……自由」  誰のせいで自由がなくなった。誰のせいで多くの人間の死を見ることになった。 「だから、ヨウくんがどんな選択をしても、誰にも責められないよ」  何もかもパステト人の奴らが奪った。  俺たちはこの十年、奪われたものを取り返すために戦ってきた。
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