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【――――ピッ……ガガッ……よう……ガガッ……】
ふいに小さな電子音とノイズ混じりの音声が聞こえてきた。それは拾い集めたヨウくんの装備の中から聞こえ、オレは音の発生源を探した。
発生源はすぐに見つかった。インカムから聞こえてくるものだった。
無視してもよかった。けど、オレは無意識にそれを耳に装着し、聞こえてくる音声に耳を傾けた。
【――ガガッ……陽介……無事かっ……】
【――陽介っ? 今から救助に……ガガッ……向かう……】
救助を伝える声がノイズ混じりに聞こえてきた。
事実を伝えるべきか悩む。だが、ここは地球人にとっては敵陣。しかも空爆後の混乱もある。少人数による救助でも困難なものになるだろう。オレは事実を伝え、救助の手間を省いてやろうと考えた。
「……彼は死んだよ」
【――ガガッ……誰だ、あんた。……何を言ってるんだ】
少しずつノイズが取れクリアになっていく声。彼の声には確かな動揺が見えた。
「そのままの意味だよ。ヨウく……陽介は死んだ」
そう告げた瞬間、インカムの向こうの気配が一変した。
【――⁉ てめぇ、ユージーンだなっ】
オレを知っている?
つまり、あの頃の友人たち。
そういえば、ヨウくんが属するチームは、あの頃の仲間で組まれているって言っていた。この声の勢いは、たぶん洸希くんだろう。今でも、しっかりとヨウくんたちのリーダーなんだな。……でも、オレのことは、もう「ユウ」とは呼んでくれないんだな……。当たり前だと理解しつつも、胸が苦しくなる。
【――てめぇっ! 陽介に何しやがったっ‼ おいっ‼】
【――おいっ‼ 何か言いやがれっ!】
インカムから聞こえてくる怒声。それは、しだいにオレを呪う言葉に変わっていく。
【――くそっ‼ 許さねぇからなっ‼ 絶対に許さねぇ……】
【――ぶっ殺してやる】
オレは無言でインカムを外し、地面に置いた。インカムからは、まだ怒りに満ちた呪いの言葉が聞こえ続けている。
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