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「よし。これで全部かな。こいつの効果は知っていると思うけど、これだけの傷なら一応一週間は安静にしておくように。あと、傷の消毒も忘れないように。で……活動許可は……一ヶ月後辺りかな。そのぐらいになったら、一度顔を出してくれ」
「はい。狩野先生、ありがとうございました」
治療を終えた先生は、簡潔に指示すると、すぐに別の負傷者の元へと向かって行った。が、ふいに歩みを止め、
「陽介。あまり無理をするなよ。自分のできることだけを考えろ」
と、医者が患者に見せるには不適切な表情で言ってきた。
「…………はい……」
俺は、その言葉を静かに受け止めるしかできなかった。
◇ ◇ ◇
「よう。退院おめでとう」
「酒持ってきたぞ~」
豪快にドアをノックする音に起こされ、玄関のドアを開けると、そこには酒を手にした見慣れた顔があった。
「おー、ありがと。さあ、上がってくれ」
俺は、部屋に男五人と酒を招き入れた。
「寝てたのか?」
皆の先頭を進み部屋に上がってきた洸希は、部屋の真ん中に敷きっぱなしだった布団を一瞥すると、主の許しなくささっと畳み、それを背もたれ代わりにどかっと腰を下ろした。
「ああ、一応まだ安静にしておかないといけないからな。まあ、本当はちょっと昼寝のつもりだったんだけど……寝過ぎたな」
カーテンを閉めていたので気づかなかったが、時計を見ると夜の七時を回っていた。洸希たちが持ってきたつまみの匂いで腹が鳴る。
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