対峙

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対峙

 …………しくじった……。  こんな所で敵と鉢合わせるなんて。  俺はジクジクと血を滲ます左腕の傷口を押さえながら、退路を探る。  荒廃した世界。人々は笑顔を失い、町からも姿を消した。人間の営みも破壊され、瓦礫の山と化している。今、この星を満たしているのは、血と硝煙の臭い。そして、迫る死の恐怖に怯え、地球の未来を危ぶむ人々の歎き。  今、地球人は危機を迎えていた。  十年前、突如始まった異星人からの攻撃。  最初の攻撃は、日本の小さな町からだった。この攻撃に対し、国は初手を誤った。異星人が都市ではなく何もない田舎を狙ったことから、国は敵の戦力を過小評価したのだ。その結果、日本はたった数日で国としての機能を著しく低下させる被害を受けることとなった。  そして、それを切っ掛けに、異星人の攻撃は世界へと拡大していった。  開戦初期、各国は個別に交渉、応戦を行っていた。しかし、交渉は決裂または拒絶、戦闘に関しても圧倒的な武力で捩じ伏せられた。そうしている間に、力を持たない小国から疲弊し、滅び、侵略され、少しずつ戦況は悪化し、二年後には世界の四分の一が異星人に侵略されていた。  そんな窮地に陥り、ようやく人類は国という垣根を超えて一丸となるべきだと考えを改めた。  人類は各国の総力を結集させた『人類軍』を組織した。  それから戦況は均衡状態が続いている。
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