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「ノアってば、明日はへとへとになって起きられないんじゃない?」  走って行くノアの後姿を見ながらアリスはくすくすと笑った。 「確かに……引っ張りだこだから疲れちゃうわね……申し訳ないことしちゃったかしら」  不安に思うナディアの肩をアリスがばしっと叩く。思いのほか力が強くてナディアはジンと痛む肩をさすった。 「良いのよ、お坊ちゃまはあれくらい揉まれとけば」 「アリスってノアさまには辛口よね……」 「そりゃそうよ、私の推しカップルの邪魔を……、っと、何でもない何でもない。ほら、私たちも働かなきゃ」 「え、あ、そうね……」  アリスに言われてナディアも慌てて持ち場に戻る。 「そう言えば、公爵さまとなんかあったー?」  アリスの乗る台が倒れないように支えていると、上から声が降ってきた。 「な、なにって……別に……」 「嘘ついてもバレバレだからね。ナディア、明るさが戻ってきたっていうか……なんか吹っ切れたような顔してるもん」 「そ、そう……?」  そんなに顔に出ていたのか、とナディアは驚く。それと同時に、やっぱりアリスに隠し事はできないなと改めて思った。 「で、何があったの?」  アリスに促され、ナディアはリュカに痣を見せたこと、綺麗だと言ってもらえたことをかいつまんで話す。するとアリスは「さすが、公爵さま!」と嬉しそうに叫んだ。 「やっぱり愛の力は偉大だわ……」 「なに言ってるのよ、アリスったら」 (そんなんじゃ、ないのに) 「例え誰がなんと言おうと、ナディアは綺麗なの。私だってそう思ってるし今までも伝えてきたでしょう?なのに、ナディアはぜーんぜん取り持ってくれなかったじゃない。なのに、公爵さまに一回言われただけで、そんなぽっぽしちゃってー! くー! 悔しい! 負けた!」  ことあるごとにリュカがナディアを愛している、と言うアリス。何を言っても言いくるめてくるから、ナディアも半分諦めている。 「私そんなつもりじゃ……なかったのだけど……、なんだかごめんね」 「謝らないでよ、ちょっと……余計みじめになるじゃない」  しおれるアリスにナディアは謝りながら、渡されたリンゴをカゴにそっと入れていく。 「でも……、ナディアが公爵さまに愛されてる自信が持てないの、ちょっとわかった気がする……。あの美しさは、確かに怖気づくのも無理はないっていうか……」 「そうでしょ……、あんなに綺麗な人が私みたいな……って、あれ?アリスって、公爵さまに会ったことあったかしら?」 「あー……」  アリスは何か観念したような顔をナディアに向けると、口を開いた。
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