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 ナディアの抵抗も虚しく、リュカはやめないどころか激しくなるばかりで、息をするのも立っているのもやっとこさ。 「おっと」  とうとう膝から崩れ落ちるナディアを、リュカの腕が抱える。再度抱きしめられて、リュカの胸に顔をうずめて羞恥でいっぱいになった己の姿を見せまいとやり過ごした。  そんなナディアを知ってか知らでか、リュカは彼女の栗毛を指に滑らせて弄んでいる。手触りを確かめるかのように、梳いてはパラパラと流してを繰り返す。 「ナディ。私はもう……あなた無しでは生きていけそうにありません」  耳元で呟かれた言葉に耳を疑った。  あの、天下のリュカ・ベルナール公爵の口から生きていけないなどという言葉が出たとは誰が信じるだろうか。 (そんなわけ……あるわけないのに……)  どうせリュカの戯れだと、ナディアはどう返せば良いかわからなくて困惑する。  自分が少しでもリュカの支えになるのなら、求められている限りはリュカのそばに居たいと思って今日まで来たナディアにとって、その言葉は至高の言葉となったことだろう。 (それは……私の言葉だわ……)  リュカを失う時を、ナディアは恐れていた。  いつか必ず、そう遠くない未来、リュカが自分に飽きる時が来るとナディアは確信している。  これ以上深入りして苦しむのは自分だとわかっているのに、どんどん惹かれていくのを止められない。 (こんな気持ち、知らなかった……)  いっそのこと、知らないままの方が良かったと思う時がくる。それでも、この思いを手放すことなどナディアにはもう出来ない。  リュカの腕の中、ナディアは幸せなのに泣きたい気持ちになった。
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