四話 ② ※流血

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四話 ② ※流血

 それは突然のことだった。 「ふ……、ふははは……!! 死ねぇええええええっ!!」  そう叫ぶと、ズイ様は手にしていた剣をノイア様目掛けて振り下ろした。僕は考えるより先に自然と身体が動いていて、ノイア様と自分の位置を入れ替え、ノイア様の身体を覆うようにした。すぐに背中に強い衝撃を受け、一瞬息が止まった。 「──かはっ!」  そして温かななにかが背中に広がり、衣服を染め上げていく。 「──っ!! リヒト──っ!!」 「ふ……はは……。余計なことを。どうせお前もノイア様の次に殺してやるつもりだったのに。どこまでも邪魔なやつ。奴隷の分際で私のノイア様にベタベタと纏わりついて、ほんっとーーに目障りでしたよ。ノイア様もあんなに尽くしてやったのに私を愛さずにこんな奴隷ごときを──。死んで詫びてくださいっ!」 『カンっカン!』『カンカンカンカキンッ』 『カキーンッ!』 「──うっ!」 「──ズイ、お前を楽に死なせてやると思うなよ……? 誰か! 誰かいないのかっ!」 「「「「「はっ! お呼びでしょうか」」」」」 「そいつを捕らえ、牢屋へぶち込んでおけっ!」 「ズイ様を……ですか?」 「様づけは不要だ! そいつは父たちの死に関係している。聞かねばならんことが沢山ある、絶対に死なないように注意せよっ! それと大至急医師を呼べっ! リヒトが死ぬことはあってはならないっ!」 「はっ!!」「はっ!」 「──リヒト……俺のリヒト……お願いだ。目を開けてくれ……。リヒトがいないと俺は息をすることすらできないんだ……うぅ……」  ──ノイア、さ……ま……。 「──ぼ、く、案外じょう、ぶ、みたい……へへ」  混濁する意識の中、かろうじて音だけを拾っていた僕をノイア様が繋いでくださっていた。特別な魔法ではなく、ノイア様だけが使える魔法。僕への愛というとびっきりの魔法で。──だけど……。 「リヒ、ト……。喋るな。お願いだから大人しく。絶対に死ぬことは許さないっ」 「は……ぃ……」  せっかく声が出せるようになったのに、もっとノイア様とおしゃべりしたかったなぁ……。  僕の意識はそこで完全にブラックアウトした。 第三章・完
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