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◇◇◇◇ 大学4年生の夏。 長い間連絡を絶っていた姉からメールがきた。 『話があります。徳くんと3人で食事にいきませんか』 20代の姉弟にしては硬い文面が、彼女の気持ちと二人の関係が融解していないことを示していた。 亜樹はパソコンデスクに肘をつきながら口元を拭った。 徳行と鞠愛は25歳。 付き合ってからはなんと10年だ。 話というのは十中八九結婚の報告。 そして3人でということはすでに両親との挨拶は済ませているのかもしれない。 彼女にとって自分は最後の砦なのだろう。 徳行との結婚に唯一落ちる陰。 「――なるほどね」 こんな日が来ると思っていた。 同時に、 こんな日が来なければいいと願ってもいた。 しかし、来てしまったからには仕方がない。 亜樹はこの10年間で決めていた計画を実行に移すべく、ある店に電話を掛けた。 「姉の婚約の祝いをしたいんです。一人1万円のコース料理3人分、あとウエディングケーキを用意してもらっていいですか?」 亜樹はそう言った後、デスクの端にある白い袋を握りしめた。 「それと。――飲み物は全員、イタリアンコーラでお願いします」
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