見えない物体

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 二人がレクリエーションルームに移動するのを見送ると、先ほど白川の車椅子を押していた女性が後片付けをしている男性スタッフに話しかけた。 「あの二人、また研究がどうたらとか言ってたわね」 「ええ。昨夜も、空き部屋に集まっては話し込んでましたよ。『世紀の発見だ!』とか言って」  スタッフの男性は、夜の見回りの際に聞いた事を女性に話した。女性の方も経験があるらしく、「そうそう」と頷きながら聞いている。 「今朝も換気の為に部屋に入ったんですけど、なんかケーキの空箱がテーブルに置いてあったし……。何なんですかね~?」 「さあね? あの二人、入所した時から馬が合ったみたいだけど、いつの間にか『博士と助手』の関係になってるし、よく分からないわ」  女性は「やれやれ」と首を振った。 「話し相手がいるのは良い事だけど、就寝時間を無視したり、無断で部屋を使ったりするのは感心しないわねえ」 「そうなんですよね~。体温計やら調理場の量りやら勝手に持ち出すし……。家族の方に相談した方がいいですかね~」  二人がそんな話をしている時、レクリエーションルームでは密かな相談がされていた。 「白金くん。まだ内密なのだが、あの物体をどこか別の場所に移そうかと考えているのだ」 「なんですって?」 「私達のラボだが、誰かに使用された形跡がある」 「大変じゃないですか、博士!」 「うむ。もし、あれが狙いなら警戒しなくてはいけない。より安全な場所を探そう」 「わかりました。お手伝いします」  そうして、二人はいつも使っている空き部屋に、車椅子を急がせるのであった。 ───おわり
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