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その時、委員会室のドアが勢いよく開いた。大柄な副委員長、三年の東海健児君だ。
「よお凛! すげーぞ! 俺たち執行部の生徒支持率が、新聞委員会の調査史上最高で八割超えたってよ。二千四百人以上の咲高生が凛の支持で……ああ、すまねえ。またノックしないで開けちまった」
「東海君、これどう思う?」
私はハンをいったん机に置いて、最後の紙を東海君に見せる。
「ああ、ヤガクの連中の議案か。どうせ全部、承認だろ?」
「ここ見て。私たちが夏休みにまとめた活動予算案。否決になっている」
「え、マジかよ。でもヤガクがうちの議案を否決するなんて、今まであったか?」
「私が執行委員会に入ってから二年間で一度もなかったと思うわ。私も定時制の議案は全部承認してきたし」
通帳を見ながら電卓をたたいていた鴫原君が、顔をあげる。
「先輩からの引きつぎで『定時制の議案は全部承認すればいい、向こうも全部ハン押すから』って話だったと思うけど」
「どういうことかしら……」
私はハンを押した議案書をぱらぱらとめくり、もう一度文面を見直した。
■第十六号議案 第百七代生徒会長の選任 三年 夜叉神華穂
「やしゃじん、かほ、さん?」
その時の私はまだ、気づかなかった。
咲別高校を一か月あまりの激震に落とし、執行委員会議事録に「双華の大乱」と記された一大政争事件。
たった八人の定時制高校で、三千人の高校に反乱を起こした夜叉神華穂さんの、私に対する最初の宣戦布告だった。
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