トナリドウシのカノジョとオレ

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トナリドウシのカノジョとオレ

「ねえねえ、昨日のドラマ観た?」 「観た観た! めっちゃ胸キュンだったよねー!」 「だよねー! あはは!」  高校というのはまるで動物園だ。  いつ何時もキャンキャンワイワイと騒がしい。  猿の檻にでも閉じ込められている気分である。  特に早朝の騒がしさはこの上ない。  朝は静かに過ごしたい俺みたいな人種にとって、最悪に居心地の悪い空間だろう。  登校して早々、帰りたくなってきた。  一番前の窓際席に座るメガネ女子も非常に迷惑そうな顔色を浮かべながら、近くで騒ぐ陽キャ共を睨み付けている。  決してバレない程度に。  俺はそんな同胞から目を逸らし、素知らぬ顔で携帯に視線を戻す。  そのスマートフォンにはとあるドラマが映し出されている。  昨晩放送されたドラマの最新回だ。   「おーっす、コータ。 おはよーさーん」 「おはよう、コータ」  それを険しい顔つきで観ていると、そこへ見知った二人組がやってきた。  中学校の頃からの親友。  牧田カズキと穂波ハルである。 「はよ」 「んだよ、元気ねぇなぁ。 どした?」  原因はこのドラマに出演している高校生女優のせいなのだが、言うわけにもいかない。  どう言い訳したもんか。 「あはは、コータは朝が弱いからね。 仕方ないよ」  流石は真の友と書いて真友のハルだ。  理由を知らないハズだが俺の顔色から何かを察してくれたようで、適当な事を言ってくれた。  紛い物ではない本物のイケメンは中身もイケメンらしい。  モテるわけだ。
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