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「あー、そういえばコータって低血圧だったっけ。 忘れてたわ、ははは!」
今日はそういうわけじゃないのだが、勘違いしてくれているのなら有難い。
そのまま勘違いしていてくれ。
と、バカ丸出しのバカに暖かい視線を送っていたら。
「……カズキは良いね、単純で。 悩みなんか無さそうで羨ましいよ」
「ハル……?」
「……ううん、なんでもないよ。 気にしないで」
神妙な顔つきからして明らかに何かありそうな感じだったが、話したくないことなのか、ハルは「また後でね」と別れの挨拶を告げると自分の席へと戻っていった。
「どうしたんだ、ハルのやつ。 いつもの余裕が無いような……カズキはなんか心当たりある?」
「さあなぁ。 朝からずっとああだから、多分家でなんかあったんじゃね?」
家で、となると、思い付くのは……ふむ。
「んじゃ俺も行くわ。 じゃーな」
「おう」
軽く挨拶を交わすとカズキも去っていった。
時計を見るとホームルームまであと五分。
だが隣の席の女子はまだ登校していない。
間に合うか、若干不安だ。
ただでさえあいつは事情が事情だから、単位がなぁ。
しかしその心配は不要だったようだ。
ガラッ。
「あっ。 おはよー、雪乃さん」
「はよー」
「ええ、おはよう」
ギリギリで入ってきたの女の子の名は冬月ユキノ。
腰まで伸びる銀色の髪を靡かせながら、颯爽と歩く姿は正に美少女。
身長も高く、体型はスレンダーでまるでモデルのような女の子だ。
いやまぁ実際のところ、冬月ユキノはモデルもこなす高校生女優な訳だが。
「昨日のドラマ観たよ、雪乃ちゃん! すっごい面白かった! 私もあんな恋愛してみたーい!」
「あんたじゃ無理よ、無理。 鏡見てから出直してなさいって。 あんたと雪乃さんじゃ月とスッポンなんだから」
「なにをー! んな事言ったらあんただって!」
最初は話に付き合っていた冬月ユキノだったが、時間を確認すると断りを入れて輪から抜け出した。
そして俺の前までやってくると。
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