神道へ向かうものたち

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 足音もなく、いきなり現れた男性。大人の圧というものだろうか、けど、父さんとはまた違う〈恐ろしさ〉をこの人に感じた。 「あっ、あの。あなたは」  勇気を持って尋ねる。男の視線が鋭くなるのを感じ、全身の毛が逆立つような思いだった。それに耐えられなくなった僕は、男から目線を外す。彼の視線は、子供の僕にとって本能的に危険信号が出るような圧力だった。 「私は神だ。坊主、その遺骨を渡しな」  神と名乗った男は、骨壺に手を伸ばしてきた。骨壺を持つ腕が反射的に強張る。この人が神様だって? そんなわけない。だって、まだ身を投げていないのに。父さんのような力がないのに、生きて神様に会えるわけないじゃないか。  頭の中で繰り返し唱えていると、男は呆れた様子で指を鳴らした。夜の森にその音は響く。展望台上の雲が広がり、強風が止む。雨水の音も聞こえなくなった。  ほんの一瞬の出来事でなにが起きたのか分からない。ぼんやりと座りこんでいる僕に男はゆっくりと近づいてきた。雲の間から顔を出した月明かりに照らされ、男の口元がはっきりと映る。少しだけ笑っているようだ。 「これで信じてもらえたかな。私はこの自然を操ることができる。もちろん、お前さんのことも知っているさ。白森教の教祖であるカズモリ氏の息子、タツキだろ」  彼は僕に目線を合わせるように腰を下ろし、右手を差し出した。 「ほんとうに、本当に神様なの?」  反応はない。無表情のまま、こちらを見つめている。僕が判断しろ、ということなのか。 「なんで、なんでリカルを助けてくれなかったんだよ。リカルは、修行を頑張っていたのに。どうして、・・・見捨てたんだよ」  再び視界が歪み始める。
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