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最後に仁君に会ってから、3日が経っていた。
会社からの帰りの戦闘態勢も2日目にはもう意識しなくなっていた。
それなのに、何も障害がなくなって喜ぶべき筈の3日目の帰り道、私の足は元実家に向かっていた。
なんでわざわざ関わりに行くんだと、自分に問うのだけれど、自然に足が実家へ、いや仁君の元へ向かった。
2日目位から、あの日黒崎さんの電話に出た時の仁君の様子を思い出して、何かあったのではと心臓がドキドキしてしまうのだ。
この心臓の鼓動が何なのかは、私にも解明は出来ない。
駅から、元実家へ向かう道が凄く長く感じられていた。
見慣れた家が見えて来た。何も考えずに来てしまったけれど、どうあの場所に斬り込んだらいいんだろう。
いや、決して私は果し合いに来た訳ではない。
斬り込まなくてもいいだろう。
遂に、仁君の家の前に着いてしまった。
仁君の家は、極々、普通の民家だ。見た目は周囲の家と何も変わらない。
表札も普通に付いていて、組なんて言葉は何処にも書いていない。
チャイムも門の横に普通に付いていた。
これ押したら、普通に誰か出てくるんだろうか。
そう、誰が出て来るんだろう。
最初に会った時の感じからすると、かなり強面な人の声が聞こえそう。
インターフォンだから、強面かどうかは分からないけど。
「想像力がどんどん膨らんで行って、今やもう妄想だな」
と呟いた。
チャイムを押そうと決心した時、背後に車の音がした。
あの日の記憶が蘇る。恐る恐る振り返る。
黒塗りのあの車が目の前に止まった。
「一花さん」
後部座席から降りて来たのは、黒崎さんだった。
黒崎さんの腕には包帯が巻かれていた。
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