第1話

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長い1日が終わった。本当なら普通の長さの1日だった筈なのに。 初日から、凄い疲労感だ。なんでこんな事になったんだろう。 先ず仁君はなんであそこにいたのか。 仁君が争っていた人達は、紛れもなくその世界の人だった。 その中でも仁君と黒崎さんは、バリバリそういう人だった。 他の誰よりも極道が似合っていた。 本当に仁君は若頭なんだ。 大学生だった仁君を思い出す。 爽やかイケメンだったのに。 確かにイケメンの部分はいまでも変わっていない。 でもごっついイケメンになってしまった。 溜息を吐きながら。駅から家への道を歩く。 あと家まで半分位の距離に差し掛かった時に、後ろからなんか嫌な気配を感じた。 それは静かにゆっくり走る、車の音だ。 歩く速さと同じ速さの車なんて、つけられているとしか考えられない。 気の所為かな?耳を澄ましながら歩く。やっぱり車の音だ。 振り向くのが怖い。でもこのまま家に着いてしまうのも怖い。 私は歩みを止めた。車の動きも止まった。 周囲には、同じように自宅に向かっているだろう人が何人か歩いているから、 突然拉致されるなんて事はないとは思うが、なにがあるかはわからない。 私は思い切って、振り向いた。 そこには黒塗りの車が止まっていた。 見覚えがある様な気がするけれど、この類の車はみんなほぼ同じに見える筈と自分に言い聞かせる。 でも、運転席には、サングラスを掛けた黒崎さんが座っていて、 私に手を振っていた。
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