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長い1日が終わった。本当なら普通の長さの1日だった筈なのに。
初日から、凄い疲労感だ。なんでこんな事になったんだろう。
先ず仁君はなんであそこにいたのか。
仁君が争っていた人達は、紛れもなくその世界の人だった。
その中でも仁君と黒崎さんは、バリバリそういう人だった。
他の誰よりも極道が似合っていた。
本当に仁君は若頭なんだ。
大学生だった仁君を思い出す。
爽やかイケメンだったのに。
確かにイケメンの部分はいまでも変わっていない。
でもごっついイケメンになってしまった。
溜息を吐きながら。駅から家への道を歩く。
あと家まで半分位の距離に差し掛かった時に、後ろからなんか嫌な気配を感じた。
それは静かにゆっくり走る、車の音だ。
歩く速さと同じ速さの車なんて、つけられているとしか考えられない。
気の所為かな?耳を澄ましながら歩く。やっぱり車の音だ。
振り向くのが怖い。でもこのまま家に着いてしまうのも怖い。
私は歩みを止めた。車の動きも止まった。
周囲には、同じように自宅に向かっているだろう人が何人か歩いているから、
突然拉致されるなんて事はないとは思うが、なにがあるかはわからない。
私は思い切って、振り向いた。
そこには黒塗りの車が止まっていた。
見覚えがある様な気がするけれど、この類の車はみんなほぼ同じに見える筈と自分に言い聞かせる。
でも、運転席には、サングラスを掛けた黒崎さんが座っていて、
私に手を振っていた。
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