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仁君に手を握られたまま、駐車場に着いた。
「一花、乗って。」
後部座席のドアを仁くんが開けてくれる。
若頭にドアを開けてもらうなんて、ちょっとどうなんだろう。
そう思いながらも、素直に従う。
「ありがとう」
この車に乗って家まで送られるのは、ちょっとと思ったけど、それを言ったら
多分トラブるだろうな。もう仕方ない、素直に後部座席に座る。
仁君が反対側のドアから、後部座席に座った。
「ご馳走様でした。ほんとに美味しかった。」
「良かった。一花はお金の事なんて気にしなくていいから」
大いに気になりますが、さっきの様な事がない様に今後は気を付けます。
「今度は私が奢るね。こんな高級なお店は無理だけど」
「そんな事いいんだよ。俺は一花と一緒にご飯を食べるのが嬉しいんだから」
仁君の笑顔が眩しい。瞳がキラキラしている。
私もこんな仁君を見ているのは嬉しいけれど、いつまでこんな状況は続くんだろう。
家も会社も知っていると言っていた。
また、会社の近くであんなトラブルを起こしたらもう誤魔化せない。
黒崎さんが戻って来た。
「お待たせしました」
「お疲れ」
さっきの怖い仁君は、いなくなっていた。
車が走り出す。心地よい車の揺れに眠気が襲って来た。
昨日、あまり寝ていない所為もある。
寝てはダメだと思えば思う程、私の瞼が重くなって行く。
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