第1話

18/20
137人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
スマホのアラームが鳴っていた。起きなくちゃ。頭ではわかっているけれど、 目が開かない。もっと寝ていようと、悪魔が囁く。意識が遠のく。 3回目のスヌーズがやって来た。もうそろそろ限界だ。 「一花、起きなくて大丈夫?」 誰かの声がする。誰だっけ?私、誰と一緒なの。 「うん、起きないとね」 私、誰と話してるの?一気に目が覚めた。 私の目の前には、仁君がいた。 「仁君?」 一緒にベッドに入っている仁君は、上半身に何も着ていなかった。 私の目はそこにくぎ付けになっていた。綺麗に腹筋が割れている。 所謂、シックスパック。 「な、なんで此処にいるの?」 私は慌てて自分を見た。昨日の服を着たままだ。 服はくしゃくしゃになっているのに、ホッとする。 「覚えてないの?」 そう言われて、昨日の記憶を辿る。ごっつい黒塗りの車に乗って、走り出してからの記憶がない。 「えっと、あ、」 何も思い出せなくて、言葉に詰まる。 「一花、可愛い」 仁君の顔が近づく。仁君の唇が、私の額に付いた。 あ、仁君の唇が熱い。ついばむ様に額から頬へ唇が移動する。 止めなくちゃと、頭の中ではわかっているのに、仁君に触れられると身体が動かなくなる。 唇が合わさった。あ、ダメ。優しく触れていた唇が角度を変えてゆっくり、強く押し付けられる。 仁君の舌が口腔内に侵入する。仁君の手が私の身体を抱き寄せた。 私の腿の辺りに硬い物があたる。あ、唇と同様に熱い。 「あ、ダメ………」 いけないとわかっているのに、仁君のキスは気持ちが良くて、止められない。 初恋の人だといっても、再会したばかりだし、付き合っている訳でもないのに。 なんで拒否出来ないんだろう。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!