第1話

2/20
135人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
手首に龍を飼っている男性がこちらに歩いて来る。 まさか、1番のお偉いさんっぽい人に声を掛けられたんだ。 怖くて目を瞑る。彼が目の前まで来たのが気配でわかる。 「やっぱり。一花だ。」 彼が私の名前を呼んだ。 え、誰なのこの人。恐る恐る目を開ける。 私の前に立ちはだかった彼は、さっき車から降りた時よりも 遥かに大きかった。 「俺だよ。俺」 俺、俺って言われても、今流行りのアレしか思いつきません。 彼がサングラスを外した。まじまじと顔を見る。思い出せない。 あ、まじまじと見てはダメだ。顔を逸らす。 「人違いです」 そう言いながら、身体が震えていた。 「忘れられたか」 彼が寂しそうに呟いた。少し口角をあげて笑った。 「まあ、いいか。これから思い出させるから」 そう言ったかと思うと、私の身体が彼の影に包まれた。 彼の両腕が私の背中に回る。え、え、え、 私の足が地面から少し浮いた。彼に抱き上げられていた。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!