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手首に龍を飼っている男性がこちらに歩いて来る。
まさか、1番のお偉いさんっぽい人に声を掛けられたんだ。
怖くて目を瞑る。彼が目の前まで来たのが気配でわかる。
「やっぱり。一花だ。」
彼が私の名前を呼んだ。
え、誰なのこの人。恐る恐る目を開ける。
私の前に立ちはだかった彼は、さっき車から降りた時よりも
遥かに大きかった。
「俺だよ。俺」
俺、俺って言われても、今流行りのアレしか思いつきません。
彼がサングラスを外した。まじまじと顔を見る。思い出せない。
あ、まじまじと見てはダメだ。顔を逸らす。
「人違いです」
そう言いながら、身体が震えていた。
「忘れられたか」
彼が寂しそうに呟いた。少し口角をあげて笑った。
「まあ、いいか。これから思い出させるから」
そう言ったかと思うと、私の身体が彼の影に包まれた。
彼の両腕が私の背中に回る。え、え、え、
私の足が地面から少し浮いた。彼に抱き上げられていた。
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