第2話

1/8
135人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ

第2話

終業のチャイムが鳴った。 終わった。溜息が出る。なんでこんなに疲れているんだろう。 仁君に会ってから、緊張だらけの日々だ。 PCの電源を切って、席を立った。 「お疲れ様です。お先に失礼します」 折原さん達はまだオフィスに残っていた。 私はまだ2日目なので、残業してまでやる様な仕事がなかったので、暫くは定時で帰れる。 そんなに大変な仕事はしてないにしても、慣れない仕事で精神的に疲れているのは確かだ。 でもそれ以外に、社外、社内で気を使う事が多い。 こんなんで転職した意味はあるんだろうか。 あ~、止めよう。考えてもまた疲れるだけだ。 鞄を手に、オフィスを出る。今日は真っすぐに帰りたい。 エントランスを出た所で、私は周りを見渡した。 左右、確認。前後、確認。 あの黒塗りの車はいなかった。胸を撫でおろす。 足早に駅に向かった。 今日は仁君に捕まらない様にしないと。急いで改札を抜けてホームへ。 きっと仁君は電車には乗らないだろうから、駅に着くまでは大丈夫だと思いながらも電車の中でもキョロキョロしていた。 どう見ても挙動不審だ、私。 最寄り駅に着いた。此処からも戦闘態勢だ。 もし仁君がいたとしても、真っすぐに家に帰ります。 そう自分に言い聞かせる。 改札を抜けて、帰路に着く。後ろが気になって仕方がない。 何度も振り向いて、後ろを歩く人に怪訝そうな顔をされる。 すみません、色々危険があるんです。そう言いたかった。 緊張のまま、家の前に着いた。仁君は現れなかった。 ホッとするのと同時に、何か物足りない気持ちが心の中に生まれる。 え、これはどんな感情?そんな自分を持て余す。 オートロックが開く。まだ油断は出来ない。オートロックが閉まった。 第一段階クリア。これって何かのミッションなんだろうか。 部屋のドアを開ける。閉める。何事もなかった。 玄関に座り込んだ。 仁君は現れなかった。それでいい筈なのに何か物足りない。 私、どうしたんだろう。 食事をしていても、お風呂に入っていても、スマホが気になる。 結局、布団に入るまで仁君からは何の連絡もなかった。 そうだよね、彼だってそんなに暇じゃないよ。 毎日私に会いに来る訳がない。 若頭って、普段何をしてるんだろう? そんな事を考えているウチにいつの間にか眠りに落ちていた。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!