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後部座席に乗り込んだ。車が走り出す。
「仁君に何があったんですか?」
「怪我って、どの位なんですか?黒崎さんの腕位ですか?」
「なんで知らせてくれないんですか?」
矢継ぎ早に質問している自分に、あれだけ仁君を避けようとしていたのにと自問自答する。
なんでこんなにムキになってるんだろう。
なんでこんなに心臓が張り裂けそうな位痛いんだろう。
「一花さん、ちょ、ちょっと待って下さい」
私の質問に、黒崎さんが待ったをかけた。
「あ、ごめんなさい。心配過ぎて、つい。」
少し落ち着こう。深呼吸をする。
「仁から、一花さんには絶対に言わない様にと釘を刺されまして、申し訳ありませんでした」
助手席に乗った黒崎さんが、前の座席から頭を下げる。
そしてそのまま項垂れた。
「え、仁君の状態、そんなに悪いんですか?」
黒崎さんの項垂れ方が普通ではなく、変な想像をしていた。まさかもう………。
「あ、あの……」
黒崎さんの言葉がはっきりしない。
仁君がどんな状態なのか、全く把握出来なくて、不安ばかりが募る。
「まさか、死んじゃったとか?」
思わず言葉に出してしまって、慌てて口を押える。
「あ、違います、違います。絶対に言うなと言われていたのに、今、一花さんを連れて行ったら、俺、どうなるのか………」
黒崎さんが項垂れている理由はそれか。この2人に凄く信頼関係があるのは
分かるけど、立場は仁君の方がかなり上みたいだ。
「大丈夫ですよ。仁君には私が無理に聞いたって言いますから。それで納得しないなら絶交します」
私の発言に、黒崎さんが胸を撫でおろしていた。
「姉さん、宜しくお願いします。」
運転していた彼がホッとしたように、そう言った。
「え、姉さんって……」
「着きました」
私の言葉を遮って、彼がそう言って車が止まった。
「病院?」
私は思わず呟いた。
そこは病院というにはあまりにも普通の家だった。
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