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この部屋に来る間に、家の中に消毒用アルコールの匂いを感じていた。
見た目は普通の民家だけど、やっぱり此処は病院なんだろうか。
「どうぞ、お入り下さい」
目の前の黒いドアが、開いた。
部屋の中央にはベッドが置かれていた。
そこには包帯を巻いた人物が横たわっているのが見えた。
頭、腕、足に包帯が巻かれていたけれど、私にはそれが誰だか直ぐにわかった。
「仁君!」
私はベッドに駆け寄った。
恐る恐る、横たわる人物の顔を確かめた。
私が想像した通りに、そこにいたのは仁君だった。
頭に巻かれた包帯は痛々しかった。彼は私の呼びかけには答えなかった。
まさか………
振り返って黒崎さんを見た。
「大丈夫です。いまは眠っています」
何も言っていないのに、黒崎さんが間髪を入れずにそう答えた。
きっと私の表情がかなり切羽詰まっていたんだろう。
急いで仁君の顔に耳を近づけた。微かな呼吸音が聞こえて来た。
ホッと、胸を撫でおろす。
一体、誰がこんな事を。私の中に怒りがこみ上げて来る。
「黒崎さんっ、誰がこんな事………」
思ったより、大きな声を出していた。
「煩いな、誰だよ。静かに寝かせてくれよ」
私の背後で声がした。
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