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仁君と私、最前列に並ばされて、そこにいる黒ずくめの男たちに向かって座っていた。
こんな大勢の人が、此処にいたのかと驚く程の人数が座っていた。
大きな組なんだと、改めて思わされた。
仁君はベッドから出る事は出来たけれど、誰かに支えられてやっと歩ける様な状態だ。
さっき、1人で立てていたのは、火事場の馬鹿力的なものだったらしい。
仁君は、座椅子の様な物に支えられて胡坐を組んでいた。
「若頭、すみません。姐さんのお手を煩わせてしまいました。」
待て、待て、今なんて?だれが姐さんなんだ?
りっくんが、ちょっと意地悪い笑みを浮かべて、私を見ていた。
「黒崎さん、ちょっと待ってください。まさか、私が姐さん?」
「姐さん!ありがとうございました!」
納得もしていないのに、そこにいる全員が叫んだ。
嘘でしょ。私はこの組の一員になった気は毛頭ない。
「一花、ほんとにごめん。まさかこんな危ない目に合わせるなんて………」
仁君が項垂れる。
「俺は若頭、失格だ。」
そんなに、深刻な事でもないと思うけど。
確かに、あの大男は怖かったけど。
「あの頃、1番強かったのは私だって忘れたの?」
仁君が余りにも申し訳なさそうなので、言ってみる。
「そうなんですか?」
思いがけず、黒いスーツの集団が反応した。
皆が嬉しそうに、笑い合っていた。
それを見て、私はちょっと絶望的な気持ちに襲われていた。
「ありがとう。」
仁君のその言葉に合わせて、黒崎さん他、そこにいる全員が大きく頭を下げた。
りっくんまでもが、頭を下げている。
「一花さんのお陰で、仁もこの組も助かりました。あなたの腕は確かです。この組に必要なお方です。」
そちらにとって必要なだけで、私は平凡な普通のOLですから。
そう言いたかったけれど、もう反論する気が失せていた。
反論した所で、この人達にとってはもう私は「姐さん」で決定しているとしか
思えなかった。
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