おめざめ。なのー!2

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おめざめ。なのー!2

【2】  『ひみつのばしょ』って言っても、ぼくの家から歩いて5分くらいの『ちいさな森の広場』なんだ。  なにもないけど、ぼくのおきにいり。  誰もこないから、ぼくはここでよく本を読んだり、お昼寝をしたりする。星を見ながら『まずいお弁当』を食べたりもするね。  ふぁあ。  さぁ。と揺れる風が気持ちいい。  芝生でお昼寝でもしようかな?  (ぼく。もう少し寝たかったんだよね……)  寝不足じゃないけど、ふぁ。このぽかぽか陽気。眠くなっちゃう。  (どうせぼくしかいないし。お昼寝にはもってこいだよね)  むふふ。  って、……あれ? 80075bfd-638e-4ff7-8b00-eed96e98a896  ぼくはその場で足を止めた。  『ひみつのばしょ』なのに、何かいる!  あおくて、丸くて……ちっちゃな悪魔? 妖精みたいな?  なんだろう? 97561d21-8c58-4189-b4d9-dffebe70d1bf  あの。2頭身のまんまるい……生き物。  地面に潜って、何してるんだろう?  ぼく。あんな生き物はじめて見た。  どくん。  興味本位でじりじりと近づいてみる……。  「しーちゃんなのー! しーちゃんねぇ あなほり もぐらさんなのー!」  どうやら。その生き物は、穴にもぐって『もぐらさん』ごっこをしているみたい。……たのしいのかな?  「もぐらさんごっこなのー!」  ぼくは、その『謎の生き物』にすっかり目を奪われていた。  ずっと立ち止まったまま『それ』を見続けること……3分くらい。  「だれか いるのー?」  気づかれた!  「え、あ! ……!」  ぼくは慌てて、その場から離れようとした!  (え、ええと!?)  ばたばた! ばたばた!  うわ! ぼくより速い!  「おいかけっこなのー? しーちゃんねぇ はやいのー!」  おいかけっこじゃないよー!  (わ! わぁっ! ええと! ええと!)  ……ぼくは一生懸命走った。  『謎の生き物』の眼がきらりと光ってる!  「わああ!!」  「おにごっこなのー? しーちゃんがおになのー? おにいちゃん つかまえるのー!」  『謎の生き物』は何だか楽しそうだけど、ぼ、ぼくは楽しくないよー!  逃げるのに精いっぱい。  けど、身体がもつれて……!  「わ! わぁっ!」  ぼくは逃げられず。  「わあっ!」その場で尻もちをついた。 【3】  ー「びっくりしたのー!」  「び、びっくりしたのはこっちだよ!」  ぼくは思わず声をあげた。  だって、ぼくしか知らない場所に……へんな、変な、変な生き物がいるんだもん! 気になってずっと見ちゃったよ!  「わぁ! しーちゃんねぇ。ごめんなさいなのー!」  ぽてぽてと、その『謎の生き物』がぼくの近くまで歩いてきた。わ! けっこう大きい。  「おにいちゃん。おしりいたくない? だいじょーぶ? だいじょーぶなのー?」  『謎の生き物』が、くりくり小さな眼で、ぼくのお尻をじろじろとながめている。びっくりして、痛みなんか気にしてなかったけど。じわじわと、お尻が痛くなってきた。  「うう。ちょっと痛いけど、ケガとかじゃないし……」  「じゃあ。だいじょーぶなのー!」  「だいじょーぶなのー!」と軽々しく言われても……。ぼくの頭は『謎の生き物』について行けてない。  ぽてぽて。ぱたぱた。  「じー……っ」  『謎の生き物』は、ぼくに興味津々らしい。自分で「じーっ」って言ってるし。  「そ、それより……。きみは何者なの?」  ぱたぱた。「えっききたいのー?」と言わんばかりの顔で、『謎の生き物』がぼくをじーっと見つめている。  「ふっふー!」自身ありげに、『謎の生き物』が名を名乗った。  「しーちゃんなのー!」  しーちゃん?  「しーちゃんねぇ。きみのなまえがきになるのー!」  『しーちゃん』と名乗った生き物は、ぼくのことをきらきらとした眼で見つめていた。ぼく。まだ尻もちついたままなんだけど。  「え、えと。ぼく……」  名乗っていいのかな? いや、名乗らせたのはぼくだし。ぼくも名乗らないと。  「ぼ、ぼくは『ルルヤ』。もうすぐ13歳になるんだ。……『しーちゃん』はどこからきたの?」  しーちゃんは、パタパタと翼をゆらした。  「しーちゃんねぇ。ここから。ずーっとみなみの『ハーモニカ城』からきたのー!」  「ハーモニカ城……?」  どこにあるんだろう? ぼくにはわからない。わかることは、しーちゃんがずいぶん遠くからこの『オトギリ町』にきたってこと。  ぱたぱた。  「すごく、遠くから来たんだね」  「なのー! とおくから きたのー!」  しーちゃん。その小さな身体でよく体力持つね。すごい!  ぼくは、すっかりしーちゃんと仲良くなっていた。  「『ルルヤ』くん。しーちゃんねぇ。おともだち ほしいのー! おともだちなのー!」  きらっ。きらっ。しーちゃんの眼が眩しい。ぴょこ! ぴょこ!  ー「おともだち。かぁ……」  ぼくには『おともだち』がいないから。  『しーちゃん』が、ぼくの……  はじめての『おともだち』……?  『おともだち』……?  「おと、もだ、ち?」  声に出して言いたくなる言葉! わぁ! ぼくに『おともだち』ができるんだ!  「いいよ! ぼく。しーちゃんとおともだちになる!」  しーちゃんは、ぴょこぴょこと飛び跳ねた。  「うれしいのー!」  (あっ!)    ぼくはふと空を見上げた。まだ夜じゃないから、お星様は見えないけど。  (お星様が叶えてくれたんだね!) 「ふふっ!」  ぼくは『しーちゃん』と『おともだち』になった。
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