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【本編】プロローグ:そこが私の戦場だから
KANGAWAカンパニーは七階建ての自社ビルを持つ電子機器を中心に取り扱う大手商社。
そしてその会社の顔とも言える受付が私こと久保美月の職場であり……
「ごめんなさぁい、美月先輩と違って私か弱いからか今少し体調悪くてぇ。少し休んでから行きますねぇ」
“あー、ハイハイ。トイレでメイク直しね”
鼻から声を出しているのかと錯覚するような甘い声に辟易とするのはいつものこと。
受付は二人体制になっているのだが、ここ最近は私一人で立つ時間が多かった。
「なっんでそれが成立するのよ」
仮にも大手企業だろう。
いつも二人いる受付が一人しかいなかったらおかしいと誰か一人くらい声をあげてもおかしくはないのだが……逆に大手だからこそ我関せず、の側面が強く出ているのかもしれない。
黒髪ストレートの私とは違いミルクティーベージュの巻き髪をふわりと肩で揺らした同僚が、全く体調が悪くなさそうな様子で更衣室を出る。
そんな彼女を横目で一瞥した私は、イライラとしながらロッカーの鍵を開けた。
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