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「ど、ど、どうしたの!? その顔!!」 「ちょっとな。たいしたことないよ」 「たいしたことあるじゃん!」  来栖くんのきれいな顔が傷だらけ。目もとが痛々しいほどに腫れあがっていた。  転んだようには見えない。どう見たってケンカの傷だ。 「見た目ほどじゃないから」 「見た目通りだよ。それ絶対痛いでしょ!」  そういえば、電車で来たんだった。 「よくそんな顔で電車に乗れたよね? みんなの注目の的だったんじゃない?」 「うん、まあ。でもフードを被ってきたから」  来栖くんはパーカーにジーンズというラフなファッション。シンプルなのによく似合っていて格好いい。  ますます年の差を感じる。  二十五歳って、こんなに若かったっけ? 「とりあえず、うちに来る? 手当てをしなきゃ。どっちみち、その顔で電車に乗るのはやめたほうがいいと思う」  それになんだか疲れきった様子。声も覇気がないし、目もとろんとしていて視点が合っていない感じだ。 「うち、ここから歩いて十分もかからないところだから」 「助かる」  やっぱり疲れているんだ。いったいなにがあったんだろう。金持ちも殴り合いのケンカなんてするんだ。意外。
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