生意気にもほどがある！

■０３■

　部屋にあがると、来栖くんはラグの上にペタンと座り込んだ。

　部屋にはローテーブル、ハンガーラック、小さなウッドラック、あと畳んだ布団しか置いていない。

　二階建てアパートのワンルームの狭い部屋は引っ越してきて三年ほど。女のひとり暮らしにもかかわらず部屋は一階だし、築二十年以上の古い物件。

　派遣で働く前は正社員で、ここよりも築浅で広い部屋に住んでいた。ベッドにソファにおしゃれなスタンドライト。季節の生花を飾り、ストレスがたまっているときはアロマキャンドルを灯し、香りに癒やされた。

　預貯金なんてほとんどしなかった。
　自炊もあまりせず、外食とテイクアウトばかり。
　洋服や靴やバッグにアクセサリーはほしいと思ったら即買いして、何度も海外旅行に行った。

　でもいまはそんな余裕なんてない。
　ベッドもソファもスタンドライトもフリマで売った。
　どうせほとんど見ないからとテレビも手放し、生花もアロマキャンドルもいまは買っていない。

　ストレス発散は近所を散歩すること。早朝や夜間の人の少ない時間帯にのんびりと歩きながら空や雲、星を眺めているとなんとなく癒やされるような気がした。

「狭くてごめんね。いま、お茶淹れるね。ホットコーヒーでいい？　インスタントだけど」

「なんでもいいよ」

「お腹空いてない？　お昼ごはん食べる？」

　そろそろ午後十二時。
　わたしはお腹がペコペコ。来栖くんもそうだといいんだけど。