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 おひとりさまは得意ではない。でもこのお店はだいたいひとりで来る。ごく普通のカジュアルなお店なんだけれど、日常からちょっと離れるにはちょうどいいのだ。  そしてここでたまに一緒になるのが瑠璃さん。瑠璃さんは一流企業の商社に勤めている。営業職で専門知識が豊富。世界中を飛びまわるエリートだ。  瑠璃さんがオーダーするのはいつもマティーニ。瑠璃さんはそれをひとくち飲むと、唇を舌なめずりし、小首を傾げた。 「それにしても短期間で派遣切りに三回もあう人間が実在するなんて驚きだわ」  凡人が言ったらどつきたくなるセリフだけれど、豊満ボディのエキゾチック美女で、ちょっと浮世離れしている瑠璃さんが言うと腹が立たない。むしろ、声も仕草も色っぽくて見とれてしまう。 「わたしは社会に必要のない人間なんでしょうか?」  これまでの派遣先での勤務状況はすべて無遅刻無欠勤。残業も快く引き受けてきたし、毎日まじめに働いていたつもりだ。  仕事も選り好みなんてしていないのに、どうしてわたしばかり契約を途中で打ち切られるのだろう。 「そんなこと考えるだけ無駄よ。その前に、社内で権力のある人間に取り入りなさい」 「どうやって?」 「女の武器を使うのよ」
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