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相手はどんなおじ様なんだろう。瑠璃さんはそのあたりの情報をくれなかった。「信頼できる人よ」ただそれだけ言って、微笑むだけ。瑠璃さんの紹介なら信用していい人なんだろうけれど、どんな金持ちなんだろう。
午後七時十三分。
待ち合わせの時間から十三分過ぎていた。
さっそく遅刻かよと思いながらも金持ちだから忙しいのかなと普段と違う思考が働くから、お金というものは恐ろしい。
「喜多見さん?」
ちょうどオレンジジュースを飲もうとグラスを持ったところで声をかけられ、慌ててそれをテーブルに戻す。
だけどあいさつをしようと顔をあげたら、あまりのことに固まった。
高級そうなスーツ。そのスーツの袖口から腕時計がチラリと見えた。ブランドはわからないが、シンプルな黒い文字盤にブラウンの革のベルトで、全体的にビンテージ感のある渋めのデザインだ。
容姿については身長は高すぎず低すぎずで、少し癖のある髪は短めで清潔感もある。さっぱりとした顔立ちだけれど、ほどよく甘さもあって、これは間違いなくモテ顔だ。
一方、物憂げな瞳には冷たさを感じる。親しみやすさはなく、近寄りがたい雰囲気を漂わせていた。
「喜多見さん……じゃないの?」
不安そうにたずねてくる。
だけど不安なのはわたしだから。
あなた、誰ですか? これ、パパ活ですよね?
想像していた人物像とかけ離れていて、そんな疑問が湧いてくる。
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