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 それなのに、こんなわたしに五十万円をポンッと払えてしまう来栖くんは絶対に只者ではない。というより、変人に違いない。  なんの仕事をしているんだろう。普通の会社員のわけないよね。外資系企業にお勤めなのかな。それとも経営者なのかな。いずれにせよ、頭がいいんだろうし、相当なやり手なんだろうなあ。 「喜多見さんって、こういうの慣れてるの?」 「こういうの?」 「男に金で買われるの」  なにげに口が悪いぞ。 「慣れてないよ。こんなふうに男の人と会うのは初めてだもん」 「チッ、マジかよ」  ちょっと、いま舌打ちした? いったいなぜ? 「来栖くんはどうなの?」 「あるわけねえだろ」  だからなんでそこで怒るんだ? ますますわからない。  そもそもなんで来栖くんはこんなことをしようとしているんだろう。来栖くんほどのルックスなら、わざわざお金を出さなくたっていくらでも女の子が寄ってくるだろうに。金持ちの考えていることは理解できない。  アイスコーヒーが運ばれてくると、来栖くんはゴクゴクと飲んでいた。  豪快に飲むなあ。もしかして喉が乾いていたのかな。  わたしも緊張で喉がカラカラ。  オレンジジュースを飲みながら、もしかして来栖くんも緊張していたのだろうかとふと思った。  どちらかというと、あまり顔に出さないタイプみたいなのでわからないけれど、そう思うようにしたら、わたしの緊張もほんの少しだけ解けた。
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