□02□

5/7
前へ
/120ページ
次へ
 わたしがオレンジジュースを飲み終えると、さっそくデートが開始される。  まずはディナー。ホテルのラウンジを出て、同じホテル内にあるフランス料理のレストランで食事をした。来栖くんが予約を入れてくれていたお店で、そこで高級料理に舌鼓を打つ。  最初、なにを話せばいいのかわからなかった。だけど来栖くんは意外にもおしゃべりだった。といっても、会話のほとんどはわたしへの質問だったけれど。  家族構成、趣味、嫌いな食べ物、住んでいる家のことなど、ありきたりなことからはじまって、わたしの仕事の話へとシフトした。 「なんで派遣切りされたんだよ?」 「今回のは相手の会社の都合でしょうがなかったんだけど。ほかは、能力不足とか即戦力にならないとかなんとか……。派遣会社の担当の人がそう言ってた。ほんとしんどいよ」 「能力不足、即戦力にならないって。自分が悪いんじゃん」 「そ、それは……そうかもしれないけど」  普通、人の傷をえぐるようなこと言う? 同情してもらいたいわけじゃないけど、もっと言い方があるよね?  派遣会社の担当者から派遣切りのことを告げられたとき、どれだけ傷ついたか。自分がいらない人間だと言われ、やる気も食欲も失せて、浮上するのが大変だったんだから。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

249人が本棚に入れています
本棚に追加