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 情けなく、俺の身体は震えてしまう。悲しむ資格さえないのに。 「たとえ気持ちには応えられなくても、俺はあの日、あの子に向き合わなければならなかったのにっ……何も、してあげられなかったっ……」 「そんなのっ……先生の、せいじゃ、ないっ……」  かけられた言葉も、俺の手に強く被さる手も、震えていることに気付く。  顔を横に向けると、古森さんが泣いていた。 「え……何で、泣いてるんですか……」  俺はたじろいでしまう。この子、泣くのか。場違いにそう驚いた。  古森さんも、どうして自分が泣いているのかわからないようだった。混乱したように首を左右に振って、呼吸さえもままならず、それでもぼろぼろと泣き続ける。しっかりと俺の手を掴んだまま。  そんなにデリケートな部分を抉ってしまったのかと、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。 「すみません。こんな愉快ではない話、聞かせるべきではありませんでしたね。忘れてください」 「違いますっ……私の方こそ、こんないきなり、ごめんなさい……困ったわけじゃ、全然なくて……」  何度も鼻を鳴らし、一層激しく首を動かしながら、懸命に言葉を繋げてくれる古森さん。 「……悔しいな。私がもう少し早く生まれていたら、先生にいつでも……何でも、弱音を吐いてもらえる友達になれたかもしれないのに……」  傷みのない長い髪が、夜風に高く靡く。ムスクに染まることなく鼻まで届く、マグノリア。
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