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「好きになってはいけない人を好きになってしまったんですが、どうすればいいと思いますか?」  日曜日の昼下がり。一人ではまず入ることのないオシャレなレストランで、俺は自分でも気づいたばかりの秘密を打ち明けた。信用できる二人の同僚に。 「え……えええっ⁉ さ、冴木先生、好きな人できたんですか⁉」  先に言葉で反応したのは橋本先生だった。まるで女子高生のようなテンションで身を乗り出さんばかりに表情(かお)を輝かせる。 「え、それ私の知ってる人⁉ 誰? 誰なんですか⁉」 「秘密です」 「ちょ、何でですか! せっかく相談してくれるんならそこは教えてくださいよぅっ。ねぇ、雨宮先生っ!」 「そうだね。俺も知りたいな。冴木先生を振り向かせたのがどんな人なのか」  いつもの余裕を広げて微笑む雨宮先生も、橋本先生に同意する。 「どんな……そうですね……」  相談したいことがあるからと、貴重な休日に時間を作ってもらったのは俺だ。ここで全く情報を明かさないのも失礼な気がして、どうすれば無難に伝えられるものかと懸命に言葉を絞る。 「普段は冷静で大人びて見えるのに、たまにものすごく無邪気なところがあって……誰かが傷ついている時に涙を流せる人……でしょうか」  夜の風に揺れる、透明な花。また勝手に浮かび上がってくるイメージを、もう拭いきれなかった。
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