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「ふむふむ、普段はクールなのにたまに子どもらしさが見えるギャップと、他人のために泣ける繊細な優しさ、この合わせ技に冴木先生はやられちゃったってわけですね?」
「改めて分析されると恥ずかしいですが……まあ、そんなところです。多分」
「だとするとその人甘え下手っぽいな……姉属性なのかなぁ。クールビューティーっていうよりはミステリアスなタイプ……?」
恋愛要素の話題になると、女性はいつにも増して脳の動きが活発になるのだろうか。橋本先生は僅かな情報からすごい勢いで像を絞り込む。
目が泳ぐのがバレそうで、俺は咄嗟に水を飲む。
「確か、好きになっちゃいけない人って言ってたよね。その人はもう結婚しちゃってるとか?」
「そうではないんですが……」
隣から踏み込まれたくない質問を向けられた、ちょうどそのタイミングで、注文していた料理が運ばれてきた。
黒カレーのオムライス。バジルのジェノベーゼ。サーモンとアボカドのクリームパスタ。
各々の前に料理が並べられる中、俺達がカトラリーを手に取る前に、「ちょっと待ってっ!」と橋本先生がスマホを取り出す。
「せっかくだから、先生達のも一緒に撮っちゃっていいですか? 先生達は映らないようにしますから」
細い手がササっと皿を中央に寄せ、綺麗に収まるのであろう角度からスマホの画面をタッチする。その動きを二回ほど繰り返してから、橋本先生は「ご協力ありがとうございました」と満足げに笑った。
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