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「驚かせたな。すまない」
固まってしまった子供二人を前にして、一言詫びると青年は組んでいた腕を下ろし、こちらに歩み寄って来た。
逃げるべきかと隣を見る。するとそこには腰を抜かしたロットがいた。
「ロット! ほら、僕に掴まって」
「う、うん……」
ロットは、混乱を隠し切れない表情で焚き火の前に座る人影と青年とを交互に見比べている。
「君達がここでひそひそしているので、何かと思ってな」
青年が肩をすくめる。
「じゃあ、あれは誰?」
「気になるのなら確かめてみるといい」
青年の言葉に好奇心を刺激されたのか、ロットは足をよろめかせながらも焚き木に駆け寄っていった。リリシスもその後を追う。
「なんだこりゃ!」
ロットが黒い外套を剥ぐと、現れたのは子供の背丈程もある大きな背嚢だった。
「さっきまでここにいただろう? 動いているのを確かに見たぞ。どうやってあそこまで移動したんだ?」
泉へと戻ってきた青年に、ロットが畳み掛けた。しかし彼ははぐらかすように口の端を上げてみせただけだった。
「教えてくれよ」
「さあ?」
「なんで!」
ロットが怒りまじりの声を出すと、青年が可笑しそうに鼻を鳴らした。
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